木を削り出す、という儀式。

 

大きな丸鑿を使って削り出します。ホントに大きな鑿なので持つのも大変です。

 

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削り出しに使う機械は、グラインダー、パンタグラフ・ルーター、CNC、と色々あります。僕は全部使った事があります。でもですよ、グラインダー使ってバイーン!って削ったりCNCでウィーン!って削ってる時にいつも思う事があったんです。

 

 

 

 

これ、楽しい?

 

 

 

って。CNCは人差し指でボタンをポチるだけです。極端な話、僕がその作業をしても足し算引き算を習っている小学生がその作業をしても出来上がる物はまったく、もう誰がやってもまったく一緒です。完全に一緒の物ができます。ですので結局、僕にはどの機械も合わなかったです。なんでこんな事してるんだろう?って。ギター製作が苦痛になってしまいました。

 

それで、考えて考えて。また、考えて。製作を辞めようと思い始めたりもして。で、また考えて。自分は何がしたいの?と自問する日々が続いて。

 

で、自分の心のスゴイ深いところに落ちてたんですけど、ワクワクしたい、という気持ち。本物の音楽家の演奏を聴いた時やとんでもない楽器を手にとった時。音楽じゃなくてもいいんですけど。映画を見て感動した、とか。なでしこのサッカーは観てると心が揺さぶられてなぜか涙が出る、とか。ソチの時の浅田選手とか。そういう時の、あの、自分の心が揺れる感じ。あの感じを、製作してる時も持っていたいな、と。そういう時って、心が自分に教えているんだと思うんですよ。ほら、これだよ、これがあなたの性質ですよ、って。それに嘘つかないで大事にしよう、と決めました。

 

そんなこんなで最終的に辿り着いた究極の道具は、“鑿”でした。これで削り出す事の楽しさといったらハンパないです。木の性格も、当たり前ですが、まさに手に取るように分かるんです。

 

 

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ですが、手道具という答えに行き着いた途端、絶望的な問題に直面する事に。それは、研ぎが下手すぎる、という。それがちょうど1年前でした。そこからは毎日、鑿ばかり研ぎました。研いでも研いでもぜんぜん砥げなくて情けなくて涙が出ました。見た目がまっすぐ美しく研げないのが許せなくて。研げないと手道具使って製作できないので、また、夜な夜な砥石に向かうんです。

 

研ぎ澄まされた道具で木を削る。木の削れる音、手に伝わる感触。ひと削り、ひと削り。鑿を入れながら究極のアーチに成るよう命を吹き込むんです。人間にギターは作れても、どんなに優れた製作家ですら木は作れないですから。それが目の前にある木に対しての礼儀かな、と思うんです。

 

 

ほら、楽しそうでしょ?

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“木を削り出す、という儀式。” への4件の返信

  1. そろそろ僕も仲間に入れてください!(土下座)

  2. タカさんはじめて。noppoといいます。

    私は下手なアマチュアギタリストですが、今回の文章を読んで、あなたのギターを手にとって弾いてみたいと、強く思いました。

    いずれそれが叶えばいいなと思います。ありがとうございました。

    1. 初めまして、noppoさん。

      機会があれば弾いて頂きたいです。その際はどうぞよろしくお願いします。こちらこそ、コメントありがとうございました。嬉しかったです。

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