木のどの部分が楽器に最も適しているのでしょうか?よく言われるのが、生えている木の南側には枝が多く、結果、節が多い。また、年輪を見て木の生えていた方角が読み取れるので、例えば、日本の寺社建築ではその木の生えていた方位のまま使うのが良いとされています。陽のあたる建物の南側には南に生えていた木を南向きに、陽の当たらない北側は北側の木を北向きに、という。北側と南側で木の発育速度が違う、とも言われています。

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でもですよ。実際に外を歩いて生えている木々を観てみると、必ずしも南側に枝が多いわけでは無いんです。散歩してて、大きな木が切り倒されてて地面に残っている切り株を見つけると、チャンスとばかりにじっくりと観察するのですが、年輪の間隔の広い方が南、とは限らないんです。斬り口を観ただけではどちらが南側か判断するのはとても難しいです。北側に節が多いこともありました。しかも、一定の方向から風に吹かれて育った側は、風の当たらない側に比べて、発育が早く、年輪の間隔も広くなっています。また、雨の少ない年は年輪の間隔が狭くなります。

自分で山に入って木を選んで、その木を斬り倒す際に東西南北の目印を付ける。これ以外に木の生育の方角を正確に知る方法がないのでは?と思っていますが、、、どうなんでしょう?僕自身もっともっと勉強していかないといけません。

ただ、年輪の間隔が狭いほど硬くて強く、広いと柔軟で木自体が柔らかくしなやかになります。これ、楽器製作でどういうことかと言いますと、年輪の間隔が狭い材を使うとメリハリのある、輪郭のハッキリしたサウンドになるでしょうか。目の詰まった年輪の間隔がタイトな材ほど良いサウンドがする、というのが常識となっていますが、年輪の広い材を敢えて使って出音の柔らかい甘いサウンドを狙う、ということも出来るわけです。さらに、年輪の狭い材を薄く削り出すことによって柔軟性を持たせたり、逆に、間隔の広い材を厚く仕上げることで音に張りを与えることも出来るのです。さらに、バックに使う木やネックも考慮すると、たくさんの“組み合わせ”が可能になります。

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最終的な判断は、その製作家の“想像力”になるでしょうか。僕の個人的な意見なのですが、突拍子も無い奇抜な見た目の楽器を作ることはそんなに難しいと感じなくて。それよりも、極々普通なギターを作って明らかな差を出すことの方がよっぽど難しいです。本当に高い技術と知識が無いと出来ません。木取りをどうするか?数年後にはどちらに反ってくるか?木の持つクセを生かすには?音はどうする?そういう目に見えない部分での“想像力”も存在するんです、見た目のデザインだけではなく。

こういう考えになったのは、数年前にサーゲ(デ・ヨング)のギターを観てからです。当時の僕は、まあ、そういう見た目のデザインに興味があって、変わったギターの製図を描いてた時期で。そんな時、サーゲの製作したギターに出会ったのですが、まぁ、ビックリしました。全く普通のボディの形でカッタウェイなし12フレット・ジョイントのスチール弦でしたが、本当に美しくて。バランスも良くて、楽器の見せ方も上手い。あ、このヒトは逃げてないな、と思いました。

製作家の“想像力”を目に見える部分と見えない部分、両方をバランス良く使ってデザインした楽器を創る。理想とする製作スタイルです。いつの日か、木の不思議を完全に理解できる日が来るのを夢見て、日々是精進するワケです。それがルシアーという職業だと思います。

ブックマッチで接着する前、そんなことを考えながら木を観ています。どこから来たんです?山のどの辺に住んでました?風は吹いてた?とか。この年は雨が少なくて大変みたいでしたね、でもこの年は飲みすぎてグダグダでした?とか。年輪見ながらブツブツ独り言を言っています。僕よりも長く生きているワケで、言わば、大先輩です。失礼がないように大切に扱わないといけません。

ブックマッチするやり方は、製作家によってそれぞれ違うと思うのですが、僕の方法を書いてみます。モレノのギターに隠されている秘密とは!?

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Written by タカ

音楽家。ギター製作家。ヒューストン・テキサス在住。

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